「Evansのvague objectについて」

日本数学会での発表要旨(h師との共同発表)

エヴァンス(Gearth Evans)は、object aが曖昧であるとは、何らかのobject bが存在してaとbと間のidentity statement (a=b)が非確定的(indefinite)であるものとして定義した。そしてa=bが曖昧であればa?neq bが結論されることを証明した。a?neq bは仮定に反するように見えるため、エヴァンスはこれは矛盾でありa=bが非確定的になることはありえない、つまりこの世に曖昧なobjectは存在し得ないと主張した。

我々は古典論理集合論で、エヴァンスによる証明と曖昧なobjectの存在が実は矛盾していないことを示した。aが曖昧なobjectであるとは、aに関して外延性公理が成立していないことであると定義することにより、曖昧なobjectの存在とEvansの「証明」の両者が整合的に真となるモデルを得ることができる。
翻訳の詳細は以下の通りである。

  1. a=bが非確定的であるとは、a=_{ext}b & a≠ b が成立する
  2. aが曖昧なobjectであるとは、a について外延性公理が成立していない(i.e. (∃ x)x=_{ext}a & x≠ a)

以上のように翻訳することにより、エヴァンスの証明を(非外延的な)集合論の中に整合的に翻訳することができる。