"Models of Deduction" (Kosta Dosen)

Synthese, Vol.148 No 3 (2006) pp. 639-657. ここ参照のこと。
こちらもよくまとまったサーベイ論文。曰く、言語における三つの重要な要素とは

  1. refering (指示), (p641)
  2. asserting (主張), (p641)
  3. deducing (推論) (p642)

であるが、古典論理/Tarskian semanticsはそのうち前者二つしか表現できない(p650)*1。なぜなら前提と結論が同じ二つの推論は、全く別の推論過程を経ていても、真理値は同じになるからだ。推論過程が表現できる「モデル」としてはλ計算があるけど、それはモデルと言うよりは新手のsyntacsと見なした方がよい(p651)。というわけでちゃんと推論過程が表現できるモデルはcategoryのみ、ということになる。
categoryで論理を表現する上で、adjointは特に大きな役割を果たす(大体deduction theorem は adjointそのものだし)。またDummettのinversion principleの重要性はcategoryで解釈することで自明となる。また古典論理のTarskian semanticsでは真理値によって命題間の同値類を定義していたと考えられるが、categoryでの同値類で考え直せば、古典論理における命題の同一性にまつわる困難から解放される。等々。
非常にわかりやすい論文だが、catgoryに関して私はド素人なので、意味をちゃんと理解しているとは言い難い。ちゃんと勉強しないと。個人的には、2章で例として出された包括原理が単にλ計算導入のつゆ払いとしての役割ぐらいしか果たしていないことが不満だ。

*1:ちなみに彼の解釈ではフレーゲの文脈主義は"asserting is more basic than refering"を主張(p648)しているとのこと。