"truth values and proof theory" (Greg Restall)

Studia Logicaに掲載予定、著者のweb siteから取得可能。
推論主義の立場から「真理値とは何か」を説明しています。要約すると以下の通りです。

  1. "Mutiple conclusion"論文に倣って、ある文の「否定を主張 (negate)」することと、それを「却下する (reject)」ことは概念として違う、という主張からスタートする。そして、[ A, B : D, E] を、「A, B の全てを主張し、D, E の全てを却下する」と読む。また、 A, B \vdash D, Eのとき、Aを主張しておきながら DとEを否定したら整合的でないので、そういうケースを除外し、整合的な文の集合のペア("position"と呼ぶ*1)を考える。
    • positonを拡大する際には、整合性の要請から、例えば [ A∧B : A, C] は [ A∧B : C] の拡大とはなりえないとか、[ A∧B : C] を含む limit position は必ず [ A∧B, A B: C]を含むとかいう(おなじみの)性質が導かれる。
    • さて、任意の有限のpositionは、整合性を保持したまま、いくらでも文を付加して新しいpositionにすることが出来る(が、もちろん上限はある)。従って、Zorn補題により、極大集合を(ペアで)取ることが可能(それを"limit position"と呼ぶ)。
  2. 後はルーチンで position の拡大をしていくと…
    • 古典論理において、limit positionは通常のタルスキ・モデルと同じもの(limit positionの左側にある文は「真なる文」、右側にある文が「偽なる文」)となる。また、結果的に真理関数的になる。
    • 直観主義論理の場合、limit positionは作り方によって beth semantics になるか、Kripke frameになる。
      • Gentzen流のLJ(\vdashの右側には論理式は一個しか存在できない)に基づき、positionの右側の解釈を変更し、[A,B : C, D]を「 A, B\neg\vdash C かつ  A, B\neg\vdash D」とすれば、最終的には Beth Semantics が構成される
      • LJではなく、\vdashの右側に複数の式を許すけれど、⇒の導入などは右に一つの論理式があるときのみ許す列計算のバージョンに基づいて limit position を構成すると、通常の Kripke frame となる。
    • S5の場合、Hypersequentによる定式化から出発すれば、通常のKripke semanticsになる。
  3. この意味で、証明論は(集合論の助けを借りることで)伝統的な「真理値」を構成することが出来、その意味で「真理値」概念は、基礎的なものではなく「証明論的構造の理想化(idealization)」だと考えることが出来る。
    • 論文のアイディア自体は、古くから言われること*2を使用している(その意味で新しいことは何もない)。
    • ポイントは、この論文では古典論理直観主義論理など多くの論理について、統一的に、そして推論主義の立場からもっとも基礎的な概念である「論理的帰結関係」をベースに真理値について語ることが出来る点である。

(後で追加します)

*1:[ A, B : D, E] がposition であることと  A, B\not\vdash D, Eは同値

*2:文の極大無矛盾集合は、純証明論的手段で構成することができ、また「真なる文」たちの外延を特定することができるため意味論ともみなすことができ、カット除去による体系の無矛盾性証明などで使用されている。しかし世間で言う『意味論』のイメージに合わない。