「なぜ意味論は「プロセス」を含むか -表示意味論/領域理論をめぐって」(岡本賢吾)

科学哲学40-2(2007) pp.23-39.
計算機科学で使われる表示意味論と、特に領域意味論に注目し、領域意味論の有限データ性とブラウワーの連続性概念が似ていることを指摘した後、領域意味論もある意味で生成的/プロセス的といえる観点から数学的構造を再構成しようとしているので両者が似ているように見えるのは決して偶然ではないと主張する。そして、そのプロセス的な視点からの数学的構造の再構成の例として、コンパクト元を付け加える操作をあげる*1。コンパクト元は、本来数学的構造の中にインフォーマルに埋め込まれていた要素の明示化にあたり、数学の中に埋め込まれていた言語的活動の表現である*2

*1:例えば \omega+2=\{0,1,2, \cdots, \omega, \omega+1\} をcpoと見なしたとき \omega+1 がコンパクト元にあたる。というのも \omega 自身は前者を持たないため到達可能ではないが、\omega+1は前者\omegaから到達可能。

*2:任意の自然数n\in\omegaに対してあるm\in\omegaが存在して n\subseteq m(*)となるが、\omega+1n\subseteq \omega+1を満たすという意味で(*)の明示化といえる。