"From fuzzy logic to fuzzy mathematics: A methodological manifesto" (Behounek L., Cintula P.)

Fuzzy Sets and Systems 157(5): 642-646, 2006。先日こちらで紹介した論文。preprintはこちら、彼らの運動のサイトはこちら
ファジイ数学は、色々な人が色々なものを提案しているが、それらの理論はあまりにfragmentationされている:どれも定義の仕方が ad hocだし、さらに理論の間の翻訳も大変である。だから、彼らは、統一的な枠組みを導入し、ad hocでない定義から、みんなが納得する方法論に則り、ファジイ数学の研究を進めよう、と提案する。このリサーチ・プログラムを(ヒルベルト・プログラムに倣って) "Hajek's programme" と呼ぶ、そうだ。
ファジイ数学の研究は3つの層に分かれる。

  1. formal fuzzy logic:Hajek style fuzzy logic
  2. foundation: fuzzy class theory
  3. individual mathematical discipline: 個別各分野

まず1について。通常、ファジイ論理は、Lukasiewicz無限値述語論理(LQ)(帰納的公理化が不可能である)のように真理値から定義されることが多いが、彼らは論理として、Hajekがやったような、Hilbert styleの公理化可能な、ファジイ論理のを少し弱めたバリアントを提案する(これを syntacitic turn とよぶ)。なぜならば、それらはsyntacticな扱いが可能であり、

  • モデル論的扱いをする際の「特定のモデル」の制約から解放され、reasoningを抽象的に取り扱うことができる、
  • それらは古典論理の部分論理であり、古典論理との連続性を保ち、古典論理上の証明をそのまま流用することができ、またこれまでのファジイ数学の証明も簡単に移植できる、
  • 通常のLQでは証明論的に複雑で、validな推論をアルゴリズムによって真偽を判定するのは難しい、
  • formal languageでかかれたHajek流の証明は、interpretationが簡単なので、すぐほかの体系に翻訳が可能、

という利点がある。もちろんintended model 以外のものを含んでしまう(non-ArchimedianなMV代数に対応するモデルとか)という欠点もあるが。
次に2について、foundationを司る理論として、色々なファジイ集合論がこれまで提案されてきたが、ファジイ数学の展開のためには、高階のファジイ論理を考えれば十分だろう。
だから、この枠組みで十分であり、今後はこの枠組みで第3層の具体的なファジイ数学の構成を進めるべきだ。

最後に個人的コメントですが、えーと、だいたい賛成ですが、集合論に興味を持つ人間としては、「高階のファジイ・クラス理論で十分」というセリフには賛成できません。だって、それじゃ面白くないじゃないか。