「ソルジェニーツィンとサハロフ」(ロイ・メドヴェージェフ & ジョレス・メドヴェージェフ)

現代思潮新社・2005年。先週初めにAmazonの古本で届いた本。旧ソ連異論派の雄によるサハロフとソルジェニーツィンに関する回想記。面白かったけれど、同じ話の繰り返しが多い。もともとロイの書いた本にジョレスが関連した回想を付け足したという構成なので、やむを得ないとは思うけれど。旧ソ連での反体制派たちの間での原稿の回し読みの話*1とか、サハロフが身の回りのことが全く苦手だったとか、当事者ならではの挿話が印象深い。
驚いた話が二つ。まずは反体制派とアメリカの関係について。反体制派の一部は、アメリカ政府の(軍事も含めた)圧力によってソ連民主化が達成されると思っていたらしい。サハロフが、アメリカでデタントに反対する強硬派が提出した通商法のジャクソン・バニク修正案を支持していたのはよく知られている。考えてみると、現ブッシュ政権の中東政策に影響を与えたとされるイスラエルのナタン・シャランスキー(アメリカは中東地域の非民主的政権に軍事・非軍事両面で圧力をかけ続けるべし、と主張)は、もともと旧ソ連時代はサハロフの弟子だったわけだし。他にも、反体制派の文書の国外への持ち出しには、アメリカ人の新聞特派員経由でアメリカの外交郵便が使われていた(おかげでCIAがソ連内部の反体制派について詳しかったらしい)とか、反体制派とアメリカの間で有形無形の協力があったらしい。

それより印象に残ったのがソルジェニーツィンの電波さ。たいした根拠もなく、自分のことを助けてくれた反体制派の人たちを中傷しまくり。今の日本にいたら絶対に2ちゃんねるで自作自演して、バレて逆ギレして粘着とかしそうなタイプに思える。

*1:ジョレスは「煉獄の中で」の原稿を読むことをソルジェニーツィンから許されたが、原稿の持ち出しを禁じられもちろんコピーもなく、朝10時から読み始めて翌日早朝までかかって読み終えたそうだ(日本語版で新潮文庫1,000ページ分ぐらい?)(p225)