「革命前夜の地下出版」(ロバート・ダーントン、岩波書店)

おもしろい。特に第3章の「逃げ回るパンフレット作者」が印象深い。啓蒙主義哲学の大御所の本を読んで胸をときめかせ、人類への奉仕を目指して文筆活動に身を投じたものの、出版業界は規制が激しく閉鎖的で新規参入が難しく、暮らしを立てていくことができない。結局最底辺で誹謗文書を書き、密輸や行商人、はては警察のスパイまでして暮らし、トラブルを招いて逃亡生活を余儀なくされる。「このような生き方は魂をも蝕み」、詐欺と恐喝への関与は日常茶飯事。彼らはこういう状況に自分を追い込んだ体制を「腹の底から憎悪」し、そして体制を地下から掘り崩していく。

しかし理想に燃えて研究者を目指したものの食べていくのが大変な身としては、彼らの悲惨な生活が人ごとには感じられなかったり。