「ドストエフスキーの一日」(L・グロスマン)

ヴィースバーデンのカジノで所持金をありたけ使い果たしたドストエフスキー、過去の体験をフラッシュバックさせながら、「罪と罰」のあらすじを思いつくさまを描く。

今まで俺が書いてきたのはくだらぬものばかりだ。金のため、名声のために、手っ取り早く書いてきた。本当の意味で深みのある力強いものは何一つありゃしない。どれもみな熟し切っていない - 流刑地の手記でさえそうだ。結局、俺が心のすべてで感じているものを - 人々が思い至りもせぬようなこの心の痛みを力強く完全に表現することが必要なんだ。(p.307)

ドストエフスキーの作品の自伝的モチーフの多さを再認識させる一作、ドストエフスキー好きにはおすすめです。