Logica 2009 (三日目・午前)
本日午前は哲学枠。
"Truth, Necessity, and Abnormal Worlds" (Jc Beal)
今回の会議で注目を集めている内容の一つに、「透明な真理観 (transparent view of truth)」というのがあります。これは真理のデフレ主義を発展させた立場で、
- 全域的な真理述語こそ真理の基礎概念であり、全ての真理の持つ性質は、これを使用して説明される。
- 古典論理上の真理理論における真理述語は、矛盾を避けるため、真理述語の領域に関して、理論的な制約(嘘つき文のようなパラドキシカルな文が真理述語の領域に入らない用にする必要がある)を持つ必要がある
- この制約はT-文よりも基礎機的なものであるため、古典的な真理理論は「透明な真理観」に反する
- そのため、「透明な真理観」は非古典論理の採用を要求する
- この際、ファジイ論理上で全域的真理述語を仮定すると、真理理論がω矛盾となるため、これが「透明な真理観」となりうるのか論争がある(私の発表参)。
- だから、Beal氏やFieldは矛盾許容論理を採用する。論理結合子(特に否定)の働きが「ビザール」(by JC)になるけど、それはやむを得ない。
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で、Beal氏は、今回、
- 透明な真理観は、通常の文の真理にかんするものだけでなく、様相性を同時にハンドルできるものであるべきである
- 従って、"spandrel"本で紹介した枠組みを、様相論理の意味論(つまりクリプキ意味論)に拡張する
やり方を紹介しました。内容は以下の通りです。
- さて、単純にBeal流矛盾許容論理の上でクリプキ意味論を構成すると、pseudo Modus ponens に関してカリーのパラドックスがおこってしまいます。
- だから、そのパラドックスを防ぐため、"abnormal worlds" という可能世界を導入します。
- ところが、変な可能世界を入れたおかげで、今度は必然性の定義を変更する必要が出てきます(「カリーのパラドックスの逆襲」現象)。
- そして、今まで通り(「全ての可能世界で真」)の自然な様相性の定義を使用すると、またカリーのパラドックスが起こり、矛盾が導かれます。
- ということで必然性の定義を再度変更すると、やっと abnormal な world を jump するような用王オペレーターが定義でき、S4(っぽい)様相が定義できました。
と言うわけで、今回の講演は「『カリーのパラドックスの逆襲』の逆襲」というべきものでした。ストーリーがあり、血湧き肉躍る、非常に面白い講演です。