「ハンガリー革命1956」(ヴィクター・セベスチェン)

これは、旧ソ連で公開された新資料によって詳しく描かれた、1956年のハンガリー革命(動乱)についての本ですが、いろいろ驚く箇所がありました。
ハンガリー革命において、例えばナジ首相が処刑されたというのは有名な話ですが、実際にはナジ首相ってどんな人なのか、これまで全然知らず、処刑されたぐらいだから積極的な役割を果たしたのだろうとおぼろげに思っていました。しかし、実は彼は状況に追われるだけの悲劇的な人だったことそうなんです。彼は突発的に起こった市街戦を収拾するために改革派の期待を担って政権の座についたものの、事態を把握できず、組閣をしている間にソ連軍の侵攻によって逃げ出すはめになったそうで。この本は、ジャーナリストが書いたせいか、人間的な面に焦点を絞って書いてあるので、物足りない面もありますが、電車の中で読むには飽きませんでした。
他には、アメリカの反応(民主革命を見殺し)に注目しているのも新鮮です。
面白い本なのですが、翻訳はどうだろう、という感じです。 例えば、おそらく原文では "Russian army" だったろう箇所を全て「ソ連陸軍」と訳しているため、本文中、ハンガリー独立運動を鎮圧するためにハプスブルグ帝国の要請で1849年に「ソ連陸軍」がハンガリーに侵攻した、という箇所がありました。