「走ることについて語るとき僕の語ること」(村上春樹)

月曜日に買った本。ランナーとしても有名な村上春樹による、ジョギング/マラソントライアスロン関連の総集編。「不健全な精神は健全な肉体に宿る」とか、以前読んだことがある話が文中散見されるけれど、それもご愛嬌でしょう。
村上氏において、長距離を走ること、特にフルマラソンの前に数ヶ月にわたってこつこつとトレーニングを積むことは、長編小説を書くという作業のアナロジーになっています。で、私にとっては、小説を書くことは論文を書くことや学会などの発表をすることのアナロジーとなります。学会発表をトレーニングのアナロジーとして捉えると、例えば学会前の発表練習について、あの寂しさやその不思議な達成感について、新しい視点を提供してくれます。このことはこの本を読むまで自分自身ちゃんと認識していませんでした。そういう点で、研究者など一人でコツコツ何かを続ける立場の人に、この本はお勧めです。
それから、村上氏は意外と失敗もしていることを初めて知りました。数ヶ月感準備して臨んだNYシティマラソンで足が痙攣したり(p196の急転回は笑った)、トライアスロンでスタート前の緊張感から過呼吸になったり。単なる成功物語ではなく、努力を積み重ね、失敗と同居して生きていく姿勢に感銘を受けます。私は失敗だけは多いですし、そういう姿勢こそ見習わないと。