「大学という病」(竹内洋)

軍国主義化を時代背景に、昭和三年から昭和十四年にいたる、東京帝大経済学部における派閥抗争と合従連衡の歴史。生臭く、面白い。社会変化によって大学神話が死につつある中、建前としての神話を取り繕う(自発的な辞職なので大学の自治は守られた(p74-75)とか)ことに固執する姿は・・・最近も見たことあるような気がする。そういえば、登場人物もどこかで見たことがあるようなタイプの人が多い。
著者は同様な構造が70年代の大学紛争でも繰り返されたとし、また現在大学神話は無くなったものの同様の神話が大学院教育において生き残っていることを指摘し、十年以内に「大学院紛争」が起こるかも、と予言する(p305)。たしかに、例えばこの文章に共感する大学院生は多いんじゃないでしょうか。で、それに対する処方箋として著者が提案するのは・・・「大学人自らによる反省を絶えず働かせることが重要なのである」(p307)。いや、そりゃそうなんでしょうけれど・・・。
しかし、関係ないけれど、「自発的に辞職」って便利な言葉ですね。