「曖昧さ:境界不在性と縮約規則」

京都科哲コロキアムの次回例会(1月28日(日))で発表することになりました。案内はこちら。私の発表は15時からです。要旨は以下の通り。

R.M.セインズブリーは、集合を使用して述語を定義することとは、述語の外延とその外部との間に鮮明な境界線を引くことであり、一方曖昧さの本質とは境界事例を許す「境界不在性 (boundaryless-ness)」にあるので、曖昧な述語は集合を使用しては定義出来ない、と論じた。
本発表では、セインズブリーに対し、以下の二点の反論を試みたい。

  1. 「鮮明な境界線」は、集合を使用して述語を定義するからもたらされるのではなく、古典論理が含む論理法則 - 縮約規則 - によってもたらされる。縮約規則なしでは、集合の持つ境界線は固定的で鮮明なものではなく、不安定で時間(証明ステップ)ごとに構成要素が変化していくものとなる。
  2. 縮約規則のない論理上で、集合の境界の安定性に対応する集合論的性質が外延性である。外延性は集合の同一性に関する性質であり、集合による曖昧性の表現において本質的な役割を果たす。従って集合による曖昧性の表現を分析する際には、セインズブリーのように「集合は境界線を引く(boundary-drawing)」の一言で話を終わりにすることは許されない。

参考文献

  1. Sainsbury, R.M. 1990. "Concepts without boundaries" Vagueness: a reader, Cambridge, Mass.:MIT press, pp. 251-264.
  2. Yatabe, S. Inaoka, H. 2006. "On Evans's vague object from set theoretic viewpoint" Journal of Philosophical Logic 35:423-434.