発表要旨

Alt.Math.談話会。発表タイトルは「包括原理と自然数」、数解研で話した内容のupdate版。

数学を古典論理の下で包括原理 (the comprehension principle) のある集合論によって基礎づけようとするフレーゲの試みは、ラッセルのパラドックスの発見によって挫折した。しかし古典論理より証明力が弱いいくつかの論理では、包括原理を仮定しても矛盾が起こらないことが知られている。このような包括原理を持つ集合論の上では古典的数学のかなりの部分が展開できるのではないか、そしてその集合論は古典数学と整合的である(つまり古典数学では証明できない定理がその集合論で証明されることはない)のではないかという希望がいだかれた。
しかし今回の発表では、Lukasiewicz 無限値述語論理の上で包括原理を仮定した集合論では、自然数の集合ωが必ず超準的な元を含む、ということが証明できることを示す。つまり包括原理を持つ集合論の下で定義されたωが、古典論理の下で定義されたωと大きく違う性質を持つということであり、我々の希望に否定的な結論を与えるものである。

ご厚意で発表原稿のpdfAlternative math Lab.に置かせて頂いております。興味のある方はどうぞご覧下さい。