買ってきた本
今まで、単に買ってきただけの本はここでは紹介しなかったのですが、今回は特別。
- 作者: ダニイルハルムス,増本浩子,ヴァレリーグレチュコ
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2010/06/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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昔、沼野充義氏の「傷だらけの魅惑」(「永遠の一駅手前」所収)で、ハルムスの作品を紹介していて、それが非常に印象に残っていました。今回、こんなマニアックな作品を刊行してくれた出版社に感謝します。ついでに、解説で言及されていた、ハルムスが出版界から追放されるきかけになった問題の詩は、多分こちら(沼野訳);
あるとき男が家を出た
こん棒片手に、リュックを肩に
遠い旅へと出かけていった
てくてく歩いて出かけていった
まっすぐ歩いて、歩いて
いつでも前を向いていた
眠らず、飲まず
飲まず、眠らず
眠らず、飲まず、食べもせず
ある日の明け方
暗い森に入っていった
それから
それから
それから消えてしまったとさ
もしもだれかその男に
ばったり会ったら
そのときは急いで
そのときは急いで
知らせておくれ
大粛清の真っ最中に、こんな「暗い森」で消えた男についての詩を書いたら、そりゃ逮捕されるでしょう。本人も、それは分かっていたのだとは思いますが、自分の周りで起こる余りの不条理を、表現せずにはいられなかったのでしょうか。
ところで、「永遠の一駅手前」では、いろいろハルムスのエピソードを紹介していて、興味のある方にはお薦めです。ロシアのインテリの間の言い伝えがソースなので、ちょっと「聖人伝」風味がありますが、「アヴァンギャルダの聖人」というのがまさしく自己矛盾的で彼に相応しいのかもしれません。
- 作者: 沼野充義
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 1989/06
- メディア: 単行本
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ついでにもう一冊。
- 作者: ヴィクトルペレーヴィン,尾山慎二
- 出版社/メーカー: 群像社
- 発売日: 2010/06
- メディア: 単行本
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