"Reductive Theories of Modality" (Ted Sider) (5)

19時より22時まで、参加者は4人、p.17-p.19の3.8節の終わりまで。

  1. "The incredulous stare"(ルイス流様相実在論に対する反論について)
    1. ルイスは、様相実在論を以下のように擁護している。
      • 可能世界が実在すると仮定する様相実在論の枠組みは、dispositionなどの他のやり方では説明に失敗する自然言語における様相概念を、非常にうまく説明する。その意味で、最善の理論 (best theory)である。
      • Quine曰く、「最善の理論が存在すると仮定する対象(例えば物理学における電子など)は、存在すると見なしてよい」
      • 様相実在論は、様相性に関する最善の理論なので、可能世界は存在すると見なしてよい(!)。様相実在論は、ルイス曰く「信じ難い」と言う点をのぞけば、それ以外の問題はない」。
    2. もちろん様相実在論は、数学におけるプラトニズムと同様、認識論的な問題(「我々と時空的に関係しない別の可能世界において、ある文が真だということを、どうやって認識することができるのか」など)は解決できない。しかしルイス曰く、「欠点はあるが、いずれにせよ、利点の方が大きい」。
    3. サイダーが指摘していることだが、様相実在論を拒否する理由について、クワインならば「『最善理論が要求する対象は存在する』というのは経験的な理論の場合のみ成り立つ」というだろうが、それはクワインが経験主義的傾向が強いからで、そんなに経験主義的でない他の哲学者が様相実在論を拒否する(「直観に反する」以外の)理由は結構謎である。
  2. actualismによる反論について
    1. 様相実在論に対する反論として、単に「ありそうもない」以上のことが言えないのか。actualistはルイスの立場を「概念的に不適切である」と非難する。彼らは「全てのものはactualであるということが概念的に正しい」と主張する。
    2. もちろん、この主張は反論可能であり、ルイスは「全てのものはactualである」という言語的規約は阻却可能(defeasible:十分な証拠さえあれば却下できる)だと主張する。
    3. 阻却可能な規約の例として、「物体AとBが接触しているとは、AとBの間に全く隙間が空いていないことである」というものがある。言葉の意味としてこれは可能だったかもしれないが、しかし、実際問題として二つの物体の間に隙間がないことはあり得ない。従って、「接触している二つの物体とは両者の間に隙間がないもののことである」という文は、(規約によって真なので)分析的ではあるが、しかし偽であるということになる。ルイスは、「actual」に関しても、同様に阻却可能であると主張する。
  3. 島宇宙」(Island Universe)
    1. ルイスの可能世界は、「時空的に関連した極大な全体」であり、例えば時空的に非連結な2点を含むような個体(例えば「この世界と別の可能世界のmereological fusionとか)は可能世界とは言わない。でも、この立場は、直感的に少しおかしい気もする。ということで、Brickerなどは「島宇宙」説(時空的孤立点を含む可能世界も許す)を検討している。
    2. という訳で、ルイス説を修正し、全ての個体(mereological sumやfusion)を可能世界と認めよう(修正案1)。そうすると、非様相的な文について、真理値がおかしくなってしまう。つまり、今我々が生きているこの(ルイスの意味での)可能世界(世界I)には、言葉を話すロバはいない。しかし、この修正案1では、「この世界+(別の可能世界にいる)話すロバ」のmereological fusionも一つの個体であり、従って可能世界である(世界II)。だから、世界Iでは文「言葉を話すロバはいない」は真だが、世界2では偽である。で、問題となるのは、世界Iにも世界IIにも、私は含まれているのだが、私にとって文「言葉を話すロバはいない」は真なのか?
    3. という訳で、再修正案を。「非様相的な文(「言葉を話すロバはいない」*1とか)の量化子は、話者と時空的に関連したところのみを領域とするように制限される」。例として、3つの点 a,b,c がある世界を考えよう。aとbは時空的に連結(a-bと書く)しているが、cは残りの二点から孤立しているとする。また述語F(x)を考え、 F(a), \neg F(b), F(c) が成立すると仮定する。
      • このとき、ルイス流の枠組みでは可能世界は (ab) と (c) の二つが存在する。当然、 (ab)\models \exists x F(x) かつ  (c)\models \exists x F(x)が成立する。
      • 再修正案では、可能世界は*27つ存在する((a), (b), (c), (ab), (ac), (bc), (abc))。さて、例えば可能世界(a)で (a)\models \exists x F(x)となるのは当たり前である。一方、可能世界(b)において、bにおける \exists x F(x)の真偽は、bと時空的に連結した点(つまり点 a)の結果も考慮に入り、当然 F(a) が成立するので、  (b)\models \exists x F(x)も成立する。実際、7つ全ての可能世界において \exists x F(x)が成立する。
      • 再修正案の問題は、様相文の評価に関して起こる。様相文の量化子の解釈の仕方をちゃんと書いていないので、これ以降は微妙な話となるが。全ての可能世界で \exists x F(x)が真となるにも関わらず、 \box \exists x F(x)は真とはならない。というのも、様相的な文可能世界 (b) では \neg F(b) が成立するからである。
      • もし世界(b)での解釈を非様相文と同じやり方で解釈をするならば、  (b)\models \exists x F(x)より \box \exists x F(x)となる。しかし、その場合でも、「世界に時時空的に非連結な点が存在する」という文は可能であるが、どの可能世界でも真ではない。

余談だが、ヴァレンタイン前日なので、Cが作ったチョコケーキをお裾分けした。

*1:\neg(\exists x) xは話すロバである

*2:empty worldを許さないので