スタニスワフ・レム

死去。大ショック。
始めて読んだレムの小説は「泰平ヨンの航星日記」(中学校の図書室にあった)だったか、「泰平ヨンの未来学会議」(市立図書館にあった)だったか。「航星日記」冒頭第7回目の旅で、宇宙船の修理中にスパナをなくしてしまい、スパナと投げ捨てた腐った牛肉が宇宙船の周りを回り始めるという話がある。気分を沈めるために両者の摂動を計算し「牛肉は600万年かかってスパナに追いつき、そのあと、それを追い越すという結論が出た」。この一節のあまりのバカバカしさに、一瞬でファンになった。
学会に参加すると必ず「未来学会議」を思い出す。ロボット掃除機「ルンバ」を見ると「泰平ヨンの回想記」を思い出す。単機能ロボットはジアゴラス教授の「進化するロボット」の先駆けだろうか。私にとってラッセルというとPrincipia Mathematicaではなく「泰平ヨンの現場検証」に登場する人工知能カセットがまず最初に思い浮かぶ。
レムの小説にも色々あるが、一番好きなのは「泰平ヨン」シリーズの歴史ものだ。宇宙船でよその惑星にたどり着いて、そのまま地下書庫に直行してずっと歴史書を読みふけるSF。こんなのレム以外で読んだことがない。
こちらもそのまねをして、書庫に引きこもってレムの未訳本を読めるようになりたいものだ。せめて国書刊行会には早く「大失敗」の和訳を出して欲しい。