四日目

本日はライトの講演と、あと数学の哲学部会に出席。

"The Key Problem of KC" (Matteo Plebani)

ウィトゲンシュタインの数学の哲学の汚点というべき「不完全性定理誤解疑惑」を取り上げ、ウィトゲンシュタインの言明を好意的に解釈する(「実は分かっていた」)ためには、越えなければならないハードルがいくつもあることを指摘。まっとうでした。

ワークショップ「ネオ論理主義」

非常に面白かったです。

"Benacerraf and Bad Company" (Michael Gabbay)

ネオ・フレーゲアンにおけるabstraction principleの代表例と言えばヒュームの原理。しかし、その代替品として、算術を十分に展開できる抽象原理はたくさん存在する。この話では、氏は「ユニタリー原理」(x+1を{x}と、Zermelo型の順序数を構成するような抽象化原理)を取り上げ、これが抽象化原理の満たしているべき性質を満たすことを示した。そして異なる抽象化原理が併存する状況では、ネオ・フレーゲアンはベナセレフ流の批判を免れないと主張。説得力がありました。
クリスペン・ライトが立ち上がって反論していましたが、予想通り何言っているのか分かりませんでした。

"Diagonalization, the liar paradox and the appendix to Grundgesetze: vol II" (Roy T. Cook)

本日の目玉。フレーゲの理論は、今まで思われていたよりも、ずっと自己言及的だった!実は、文を量化の対象にすることが可能で、対角化と対角線論法も可能、従って嘘つきパラドックスフレーゲ理論内部で導出することが出来る!この見過ごされて来た点と、ラッセル・パラドックス以後のフレーゲの「解決策」との関係も論じ、最後はTerzianを引きながら、嘘つきパラドックスラッセルのパラドックスらの自己言及的パラドックスを説明する意味論的理論の必要性を訴えて〆。うん、役者が違う。圧倒的でした。
フレーゲの理論の強い自己言及性については、おそらく、フレーゲに詳しいヒトはすでに知られている点なのでしょう。しかし、私にとっては大きな驚きでした。

エクスカーション「トラッテンバッハ村訪問」

ワークショップは質問も早々に切り上げられ、観光バスでトラッテンバッハを訪問する。

ウィトゲンシュタインが初期に下宿していた家。

庭ではワイン・パーティー。村長が挨拶。

入り口。上から撮影。

屋内の展示。

ウィトゲンシュタインが子供たちのために作ったという、猫の骨格標本
庭で雑談しながらN氏らとワインを飲む。23時に帰る。